2月14日はヴァレンタインデーということで、幸せを感じる方もいれば、そうでない方もいらっしゃり、様々に過ごされるのだろうと思います。
そんな中で話題に上がったのが、同性カップの方たちによる訴えです。コチラはBBCニュースの記事です。
タイトルが次のようになっています。
Gay couples sue Japan over right to get married
“同性カップルたちは日本を相手取り、あらゆる権利を得るべく、結婚するために訴訟を起こす。”
短い一文なんですけど、訳し方が分からなくて、迷ってしまいました。というのも「to get married」を「right」に係るものとして訳すべきかどうかで考えてしまったからです。
係るものとして訳せば「結婚するための権利」となります。この意味は“婚姻を成立させるための方法”を探る、という意味合いになってしまいそうで、ちょっと違うなと思いました。
私が、いろんな記事を読んでみた印象では、彼/彼女たちは婚姻で享受できる権利なども視野に入れているので、あらゆる権利のための闘いを意味していると考えました。(婚姻が成立すれば享受できる権利とも考えれるので、“結婚のための権利”と訳してもいいのかもしれませんが。)
そのため、「over」という単語が使われているのではないでしょうか。「覆う」という意味合いを含ませたいと思い“あらゆる権利を得るべく”と訳してみました。
結婚で得られる権利とは
2015年4月に施行されたの渋谷区の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を皮切りに、徐々に同様の制度をもうける自治体が増えてきています。
東京:渋谷区 | 渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例 | 東京:中野区 | 中野区パートナーシップ宣誓の取扱いに関する要綱 | 東京:世田谷区 | 世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱 |
群馬:大泉町 | 大泉町パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱 | 三重:伊賀市 | 伊賀市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱 | 千葉:千葉市 | 千葉市パートナーシップの宣誓の取り扱いに関する要綱 |
兵庫:宝塚市 | 宝塚市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱 | 東京:豊島区 | 4月予定 | 沖縄:那覇市 | 那覇市パートナーシップ登録の取扱いに関する要綱 |
東京:府中市 | 府中市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱(案) | 北海道:札幌市 | 札幌市パートナーシップの宣 誓の取扱いに関する要綱 | 熊本:熊本市 | 4月予定 |
福岡:福岡市 | 福岡市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱 | 大阪:堺市 | 4月予定 | 大阪:大阪市 | 大阪市パートナーシップの宣誓の証明に関する要綱 |
神奈川:横須賀市 | 4月予定 |
パートナーシップ制度は婚姻とは違い、法的効力がありません。
では逆に、なぜ婚姻は法的効力を持つことができるのか?、という疑問が湧いてきました。なぜなのでしょうか?
なぜ婚姻は法的効力を持つのか?
日本国憲法には次のようにあります。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
憲法にはこのように書かれていて、これが全てです。“両性の合意に”よれば婚姻は成立するはずです。そして具体的にどのような法による保証があるかというと、それは民法に書かれています。
民法での婚姻
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
民法には婚姻に関する項目がいろいろと書かれていますが、ここでは婚姻は「戸籍法」によって効力を得ていると書かれています。
婚姻の法的根拠は「戸籍法」にあると民法は言っているのです。
余談ですが、民法を今回ざっとではありますが読んでみて、けっこうおもしろかったので、興味ある方は一度読んでみるといいと思います。
戸籍法に書かれてある婚姻
戸籍法には次のように書かれています。
第六節 婚姻
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項
婚姻時に提出する婚姻届けとともに各自治体は、届け出先の市町村に本籍がないとき戸籍謄本の提出を義務付けています。
このことは、戸籍法は自身をその根拠にしている、と考えることができると思います。ではその戸籍法とは一体何なのか、ということを考えて見なければなりません。
戸籍法です↓
そして、戸籍には次の事柄が記載されなければならないと戸籍法は言っています。
第三章 戸籍の記載
第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入つた原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六 夫婦については、夫又は妻である旨
七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
八 その他法務省令で定める事項
第十四条 氏名を記載するには、左の順序による。
第一 夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻
第二 配偶者
第三 子
ここから感じることは、戸籍は個人を証明するものなのですが、その個人は戸籍という枠組みによって保証されているということです。戸籍が念頭においている枠組みとは何でしょうか。それは、あきらかに「家族」であり、もっといえば家族が繋がりを持っているとされる「流れ」です。
この「流れ」は抽象的ですが、戸籍法の至る所に出てくる“戸籍に入る”という表現から考えてみるに、「流れ」の発生源としての「家」だろうと思います。
第二章 戸籍簿
第六条 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。
それゆえに戸籍法は「夫婦⁺子」を基礎とできなければだめ、と暗に考えていることになるのではないでしょうか?
しかし、戸籍法を読んでみても、同性であるからだめ、とはなっていません。戸籍法自体がどこかに根拠を持つものではなく、自己言及的に“戸籍”なるものに根拠をおいているだけであり、法効力の源泉として考えるには不十分でしかないのではないかとも思います。
私の結論としては、同性婚を否定する法根拠は実はどこにもないのではないか、ということです。根拠になるのは憲法と、私たちの意志だけだと思います。そして今回訴えを起こした方々のように戦うこと。
戸籍についての問題に深く言及されている人に、佐藤文明さんがいらっしゃいます。私もここから多くを学んでいます。